事故物件とは、事故・事件・自死などで人が亡くなった物件です。心理的瑕疵物件(しんりてきかしぶっけん)と呼ばれることもあります。10年ほど前までは、事故物件は人気がなく、家賃を格安にしても借り手がつかないというものも珍しくありませんでした。現在ではむしろ「期限が付く可能性が多いが、良い条件の家に安く住めるチャンス」として人気です。しかし、物件内で死者が出た場合、そのまま借り手を探すわけにはいきません。専用の清掃が必要です。
そこで、今回は事故物件を再度賃貸に出す際に必要な清掃について解説します。
- 事故物件とは何か?
- 事故物件の清掃とは?
- 清掃を依頼する方法や注意点
- 特殊清掃や事故物件に関するよくある質問
- おわりに
この記事を読めば、業者の探し方や依頼方法などもよく分かるでしょう。興味がある人は、ぜひ読んでみてくださいね。
1.事故物件とは何か
この項では、事故物件の定義や問題を解説します。どのような問題があるのでしょうか?
1-1.事故物件の定義
前述のとおり、事故物件とは事件・事故・自死・孤独死などの理由で、人が亡くなった物件の総称です。賃貸物件の場合、不動産業者は次に物件を借りる人に、人が物件内で死亡したことを伝える義務があります。そのため、このような名称が生まれました。ちなみに、事故物件の定義は「敷地内で死亡した」ことですから、一戸建ての場合は庭で亡くなった場合、アパートやマンションの場合は共有スペースで亡くなった場合も、事故物件となるのです。ただし、死後すぐに家族に発見されるなどして、病院に搬送されて死亡が確認された場合や、家で医師に看取られて亡くなった場合は、事故物件にはあたりません。
1-2.貸し主の問題
部屋で人が亡くなりしばらく発見されないと、腐敗が始まります。人が腐敗した場合、臭いはもちろんのこと血液や体液が室内を汚染してしまうのです。遺体が搬出されても、臭いや汚れはそのまま残り、通常の清掃では再び賃貸に出すことはできません。また、「人が亡くなった部屋」というのは敬遠されるため、家賃を下げるなどしないと借り手がつかないことが多いでしょう。経済的な損失はかなりのものになります。
1-3.借りる人の問題
ひとり暮らしをしており仕事にもついていない場合、亡くなってもしばらく気づかれない可能性が高くなります。本人も無念だと思いますが、賃借人が死亡した場合、保証人になっている人に部屋の原状復帰の義務があるのです。ですから、賃借人本人よりも、保証人を引き受けた人や家族に経済的な負担がかかります。また、事故物件を防ぐために、1人暮らしの場合は高齢になるほど部屋が借りにくくなるなっているのが現状です。
2.事故物件の清掃とは?
ここでは、事故物件が生じた場合の清掃の必要性や、内容について解説します。
2-1.清掃が必要な理由
人が室内で不自然な亡くなり方をした場合、遺体がひどく損傷するケースがあります。特に、発見されるまでに時間がたった場合、室内の汚染は大変なものになるでしょう。警察は遺体の回収はしてくれますが、現場はそのままです。遺体の血液や体液には細菌やウィルスが繁殖している可能性も高く、臭いもひどいことが珍しくありません。そのため、部屋を原状回復するためには、特殊清掃と呼ばれる専門の掃除が必要です。特に集合住宅の場合は、ほかの部屋に住んでいる人のためにも、清掃は大切になります。
2-2.清掃の内容
事故物件の清掃は、室内のクリーニングだけでなく消毒や壁紙、フローリングの張り替え作業などを行います。また、故人が使っていた荷物の処分をすることもあるでしょう。
2-3.一般的なハウスクリーニングとの違い
事故物件の汚れは、感染症の危険が高いものがあります。害虫駆除が必要なことも多く、掃除をする際はゴーグル・マスク・手袋・防護服をつけて行うことが一般的です。また、使用した清掃用具やマスク・手袋などは医療廃棄物になり、ゴミとして処分できません。清掃する人も感染症などに対する知識が必要です。
3.清掃を依頼する方法や注意点
この項では、特殊清掃を依頼する方法や清掃の流れ、注意点などを解説します。ぜひ、参考にしてください。
3-1.清掃は誰が依頼するべき?
賃貸物件で特殊清掃が必要になった場合、基本的には部屋の借り主や保証人が清掃を依頼しなければなりません。賃貸契約を結ぶ際、借り主は原状回復の義務をおっています。実際は、大家や管理会社が業者に依頼して、保証人や同居人等に料金を請求することが一般的です。
3-2.特殊清掃を行う業者とは?
特殊清掃を行う業者の中には、ホームページを開設しているところもあります。依頼したいという場合は、インターネットを検索するか、イエローページなどを探しましょう。不動産業者が紹介してくれるケースもあります。なお、特殊清掃には専用の洗剤や防護服も必要ですので、通常のハウスクリーニング業者には依頼できません。注意しましょう。費用は汚れ具合によって異なりますが、死後時間がたったケースほど汚れもひどくなり、クリーニング代も高くなる傾向にあります。
ちなみに、現在特殊清掃を行うために特別な資格などは存在しません。近年、遺品整理士という民間資格を作った団体が、新たに特殊清掃士という民間資格をたち上げました。まだ取得者数は少ないのですが、取得している人は特殊清掃に関する専門的な知識や技術を持っています。業者を選ぶ際の参考にしましょう。
3-3.遺品について
事故物件では、故人の財産である家具や家電もそのまま残されます。使えるものがあれば遺族が引き取ることもありますが、臭いや汚れがついているものは、そのまま処分されることが一般的です。故人に遺族がいない場合、仏壇や位牌(いはい)なども処分の対象になってしまうこともあるでしょう。故人の血液や体液がついてしまった場合は清掃業者が処分してくれますが、それ以外は遺品整理業者などに依頼して処分してもらいます。
3-4.注意点
特殊清掃は、早いほどきれいになります。遺体が搬出されてすぐに依頼することが大切です。故人の遺族や保証人に連絡を取ってからと考えれば、時間がたってしまいます。また、特殊清掃は一般の清掃よりも割高ですが、感染症などの二次災害を防ぎ、再び部屋を使えるようにするための作業です。あまりにも相場より安い業者は、必要な過程を省略している可能性もあります。業者に依頼する場合は、口コミなども参考に、できるだけ実績が多い業者に依頼しましょう。なお、清掃から遺品整理まで一括して行ってくれる業者もあります。
保証人を引き受ける場合は、高齢者の1人暮らしの場合は、こまめに様子を見に行くなど孤独死を防ぐ取り組みなどを行いましょう。孤独死の場合は発見するまでに時間がかかり、原状回復に時間と費用がかかることも珍しくありません。高齢で1人暮らしをしている場合は、万が一の時に備えておくことも大切です。
4.特殊清掃や事故物件に関するよくある質問
Q.住宅内で死者が出た場合、必ず特殊清掃を依頼しなければダメですか?
A.死後すぐに発見され、適切な処置を受けた場合以外は、依頼した方がよいでしょう。
Q.特殊清掃を自分たちで行うことは可能ですか?
A.不可能ではありませんが、適切な教育を受けていなければ感染予防の処置も取ることができません。また、掃除をした器具は医療廃棄物扱いになり、通常のゴミとしては捨てられないため、業者に依頼した方がよいでしょう。
Q.特殊清掃を行わなかった場合、何か罪には問われますか?
A.いまのところ特に罰則はありませんが、特殊清掃を行わなければ、再び賃貸物件として使用することは難しいでしょう。
Q.離婚して離れ離れになり、しばらく会っていない親が孤独死をしたという連絡がきました。特殊清掃の費用などを負担する必要はありますか?
A.遺産をすべて放棄すれば、清掃などの義務を負うことはありません。ただし、借金を払ったりした場合は遺産相続の意志ありとみなされてしまうので、気をつけましょう。
Q.特殊清掃を行えば、臭いなども消えますか?
A.はい。一般的には原状回復が可能です。
5.おわりに
いかがでしたか? 今回は事故物件の特殊清掃について解説しました。アパートなどを経営している人は、特殊清掃を請け負ってくれる業者などを調べておいて損はないでしょう。また、高齢で1人暮らしをしている場合は、いざというときにすぐに外部と連絡を取る方法を作っておくことが大切です。現在は、自治体が孤独死を防ぐ取り組みを行っていることも多いので、一度自治体の福祉課などで相談してみましょう。