病気になっている人が多く出入りする病院は、常に清潔な状態にしておかなければなりません。普通の場所よりも病原体となるウイルス・菌が空気中に多く存在しています。清潔な状態を維持するためには、清掃が必要ですよね。しかし、「どのように清掃すればいいのかわからない」「病院内が広くて手が足りない」など、悩んでいる方は多いでしょう。
そこで本記事では、病院の清掃とはどういうものなのか、清掃内容や業者に依頼する方法など詳しく説明します。
- 病院の清掃について
- 病院の清掃内容は?
- 病院清掃を業者に依頼するポイント
- 病院の清掃に関してよくある質問
この記事を読むことで、病院の清掃に必要な知識を習得し、清潔な状態を保ち続けることができます。病院の清掃について知りたい方や業者に依頼したい方は、ぜひチェックしてください。
1.病院の清掃について
ほかの場所よりも、清掃・衛生管理に気をつけなければならないのが病院です。衛生状態を良い状態に保ち続けるために、病院の清掃とは何なのか詳しくチェックしておきましょう。
1-1.病院の清掃とはどういうものか
病院は規模が大きければ大きいほど、清掃範囲も広くなります。また、さまざまなウイルス・菌がただよっている場所なので、清掃に力を入れなければなりません。そのため、自分たちで清掃するのではなく、清掃業者に依頼している医療機関がほとんどです。プロである清掃業者に依頼することで、隅々まで掃除が行き届き、効率よく清掃作業ができます。病院内を常に良い衛生状態に保ち続けることができるのです。また、病院の清掃をおこなう人自身も注意しなければなりません。健康体であっても、病院内にただよっているウイルス・菌に感染する場合があります。清掃作業員もウイルス・菌に感染しないよう工夫が必要です。
1-2.病院の清掃の重要性
最初に、病院はオフィスや商業施設とは異なり、病気になっている人が集まる場所と把握しておかなければなりません。患者さんが集まる場所=ウイルス・菌が集合している場所なのです。もし、清掃を怠ればウイルス・菌が蔓延(まんえん)し、病人を増やす恐れがあります。もともと病気になっている人も状態が悪化してしまうでしょう。病院は病気を治すための場所なので、常に清潔な状態を維持し続けることが大切です。清潔な状態を維持するためにも、毎日できる清掃から定期清掃・臨時清掃ときちんとおこなわなければなりません。
1-3.一般清掃との違い
一般清掃と病院清掃の大きな違いは、その場にいる人物です。一般清掃の場は、オフィスやビルなど健康的な人が存在する場所になります。一方、病院清掃は常に患者・医療従事者が存在している場所の清掃です。汚れを取りのぞくだけでなく、どうすれば病気が発生しない環境になれるのか、ウイルスの感染を防ぐにはどうすべきかなど考慮した清掃になります。また、患者さんのプライバシーを考慮した清掃でなければなりません。
2.病院の清掃内容は?
それでは、病院の清掃内容について詳しくチェックしていきましょう。衛生管理を徹底するためにも、病院の清掃箇所や方法・院内感染の恐ろしさなど知ることが大切です。
2-1.清掃箇所と方法
病院の清掃は、主に、日常清掃・定期清掃・臨時清掃と3つの方法があります。それぞれの掃除箇所や具体的な方法について詳しく説明しましょう。
2-1-1.日常清掃
日常清掃は、毎日おこなう清掃のことです。たとえば、患者・利用者が使用するトイレの清掃や洗面・病室・廊下など、人の出入りが多い場所の清掃をおこないます。頻繁に人が出入りする場所は汚れもたまりやすいので、毎日掃除をしていかなければなりません。また、病院の場合は多くの人の手が触れる場所から感染する恐れがあります。トイレの洗面にある蛇口や手すりなど、人の手に触れやすい箇所はアルコールによる除菌が必要です。ほかにも、建物周辺・玄関のごみ拾いやエレベーター内のふきあげなどをおこないます。
2-1-2.定期清掃
日ごろできない箇所や素人では難しい箇所の掃除を集中しておこなうのが定期清掃です。病院における定期清掃は、院内や待合所のワックスがけ・ガラス清掃・敷地内の除草・エアコンや換気扇の清掃などをおこないます。病室についているブラインドの清掃も定期清掃です。素人ではなかなかできない清掃でも、プロがおこなえば短時間でキレイになります。病院や業者によって異なりますが、定期清掃の頻度は数か月に1回程度です。
2-1-3.臨時清掃
臨時清掃は急に清掃が必要になった場合の清掃のことです。また、定期的に掃除をする必要はなくても、汚れが目立ってきたときにおこなう掃除にもなります。たとえば、病院の看板やエアコン内部の清掃・外壁や屋根の清掃・高い場所のガラス清掃・排水管清掃・浄化槽と貯水槽清掃などです。
2-2.院内感染について
病院の清掃で最も気をつけておかなければならないのが、院内感染です。清掃が不十分だと、院内感染のリスクが高まります。たとえば、床の清掃です。床は外部からのホコリがたまりやすい場所になります。モップを使用した湿式清掃・消毒が感染を防ぐ大切なポイントです。毎年、ノロウイルスやインフルエンザなどのウイルスが流行しています。院内感染は病院内にいる人たち全員へ感染する恐れがある大変なことです。特に、ウイルスは排泄物(はいせつぶつ)や嘔吐物(おうとぶつ)から感染するといわれています。そのため、日常清掃としてのトイレ清掃・消毒は入念におこなわなければなりません。
2-3.行政機関への提出書類
病院は行政機関から清掃状況・衛生管理などについての情報・検査を求められたとき、必ず協力しなければなりません。清掃状況・衛生管理がわかる書類の提出が必要です。清掃業者に委託している場合、業者が行政機関へ提出する書類を用意します。提出する書類は、業務内容がわかる清掃業務仕様書などになるでしょう。業者に依頼すれば、病院側で用意する手間がはぶけます。
2-4.病院清掃委託責任者について
医療法施行規則は、病院が清掃を外部に委託する場合に必要な責任者のことが記載されている規則です。外部に業務委託する場合は、受託業務場所(病院)に受託責任者を配置することが義務づけられています。また、病院清掃委託責任者は、全国ビルメンテナンス協会が実施している病院清掃受託責任者講習を毎年1回受けなければなりません。病院清掃委託責任者は以下の項目に当てはまる者とされています。
- 医療機関での清掃業務を含む清掃業務に3年以上経験がある者
- 作業計画の作成・作業の方法・作業の点検および業務の評価・清潔区域等医療施設の特性にかんする事項・感染の予防の知識を持っている者
2-5.注意点
病院の清掃で注意しておきたいのは、清掃方法だけではありません。清掃に使う道具にも注意が必要です。清掃道具が汚れている場合、掃除をしても清潔になりません。さらに、感染リスクが高まる可能性があります。業務委託をおこなう際は、業者が掃除道具を用意することになるでしょう。きちんと清潔な掃除道具を使用しているか、病院側のチェックが必要になります。
3.病院清掃を業者に依頼するポイント
ほとんどの病院が清掃を業者に委託している状態です。病院清掃を業者に依頼する際のポイントをきちんと踏まえておきましょう。清潔な状態を維持できるかどうかは、業者選びにかかっているといえます。
3-1.選び方のポイント
入念な清掃が必要な病院だからこそ、安心して依頼できる業者を選ばなければなりません。清掃業者は全国に多数存在しているため、「どの業者に選べばいいかわからない」と悩んでいる方は多いはずです。そこで、清掃業者選びのポイントを以下にまとめてみました。
- 親切かつ丁寧なスタッフの対応
- 危険な状態でもすぐに対処できるか
- 清掃業務の実績と豊富な知識
- 見積もり内容が適切か
病院清掃は業者との連携が大切です。清掃作業手順書のとおりにおこなっているかどうか、連携によって確認できます。そのため、親切・丁寧なスタッフであれば気持ちよく確認し合うことができ、安心して依頼できるはずです。また、清掃時に壊れた箇所を発見した場合も、迅速に修繕等の対応までできる業者を選びましょう。危険な状態はすぐにでも対処しなければなりません。しかし、清掃だけのサービスでは、新たにリフォーム業者を手配しなければならないでしょう。それでは、時間も手間もかかってしまいます。内装工事を手がける部署を持つ業者であれば、万が一の際も心強いです。
3-2.料金相場
清掃業務を委託する際、最も気になるのが費用ですよね。「どのくらいかかるのか」「高く請求されるのでは」と不安に思っている方は多いでしょう。具体的な費用は業者によって異なります。主に、清掃内容・頻度・場所(床面積)で計算されるため、具体的な清掃内容を業者に伝えてみてください。さらに、1社だけでなく、複数の業者に見積もりを依頼するといいでしょう。1社だけでは料金相場がわかりません。複数の業者から出た見積もりを比較することで、料金相場がわかります。ここで、気をつけておきたいのが「料金の安さだけで決めないこと」です。安すぎる清掃業者は、きちんと清掃をおこなわない傾向があります。見積もりだけでなく、スタッフの対応やサービス内容なども比較しましょう。
3-3.業者に委託する流れ
まず、大まかな清掃業務を業者に伝え、見積もりを出してもらいます。見積もり内容を確認しながら、清掃業務のプランニングをおこなう流れです。プランニングでは、清掃業務の範囲や作業内容・配員・コストなど具体的な清掃業務内容について話し合います。プランニングがきちんとできるかどうかで、業者の経験が豊富かわかるでしょう。実行経験がある業者ほど、具体的かつ丁寧なプランニングができます。そして、清掃業務委託契約書を交わしたら契約完了です。疑問点が出てきたら、話し合いの中ですぐに尋ね解決しましょう。その場ですぐに尋ねたほうが、業者ともスムーズにやり取りができます。
4.病院の清掃に関してよくある質問
病院の清掃に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。
Q.清掃作業員の感染を防ぐ工夫は?
A.清掃作業員は、感染防止のために手袋・マスクの装着が必要です。場合によっては、防護着を身につけることもあります。医療機関で使われる使い捨てタイプの使用が多いです。掃除中だけでなく、手袋・マスク・防護着を脱ぐときも気をつけなければなりません。誤って感染の恐れがある場所に触れないよう、病院側と清掃作業員のコミュニケーションが必要になります。
Q.病院の清掃でやってはいけないことは?
A.便器を拭いた雑巾で壁を拭き、再び便器を拭くなど掃除の手順を混ぜてはいけません。なぜなら、せっかく清潔にしたところが汚くなってしまうからです。作業の手順や場所ごとに使う掃除道具をきちんとわけていきましょう。
Q.病院清掃に必要な道具は?
A.手袋・マスク・防護着はもちろんのこと、ぞうきん・モップ・消毒用アルコール・バケツ・床専用のクリーニング機器などが必要です。清掃道具は病院側ではなく、業者が用意してくれます。業務を委託する際は、どのような道具を使うのか、どのように管理するのか詳しく確認してください。
Q.清掃作業計画書・作業手順書の必要性は?
A.清掃の維持管理に必要なのが、清掃作業計画書と作業手順書です。作業計画書は、清掃作業者がいつ、どの場所を、どのような方法でおこなうかを示した作業の工程表になります。対象作業・時間・清掃従事者・作業方法をきちんと記載しなければなりません。そして、作業手順書は、対象場所にどの清掃道具を使用し、どのような方法でおこなうのかを示している書類です。どちらも清掃業務をおこなう責任者(委託の場合は業者)が作成します。
Q.清掃業務を委託する際、病院側が気をつけるべきことは?
A.病院の中には、清掃業務を丸ごと委託業者に任せているところがあります。しかし、病院側と清掃業者側が連携することで、清潔な状態が維持できるものです。清掃作業計画書・手順書・報告書を確認しながら、業者とのコミュニケーションを深めていきましょう。気軽に意見を交換するためにも、コミュニケーションの取りやすい業者を選ばなければなりません。
まとめ
いかがでしたか? 病院は病気の人が集まる場所なので、ウイルスや菌が空気中にただよっています。一般清掃よりも入念にしなければ、感染する恐れがあるのです。現在、ほとんどの病院が清掃業務を業者に委託しています。業者に委託する際は、清掃業務の内容や実績・サービス内容・見積もり・スタッフの対応などを見比べたうえで選択しなければなりません。そして、業者と連携を重ねることで、清潔な状態が維持できます。病院清掃にかんする知識を得てから、業者を選び、清潔さが維持できる環境をつくりましょう。