ゴミの不法投棄は環境汚染などにつながるため、社会問題となっています。不法投棄は犯罪で、逮捕されるケースもあるのです。不法投棄にはどのような罰則があるのか、どのような場合に不法投棄とみなされるのかなど、分からない点が多いでしょう。
本記事では、不法投棄の罰則や事例をご紹介します。
各自治体でゴミの分別が厳しくなったことが原因で、仕分けを面倒に感じる方が安易にゴミ置き場へ放置してしまうケースがあります。不法投棄の罰則を知り、ルールを守ることの大切さをしっかり認識しましょう。
1.不法投棄とは?
まず、不法投棄とはどのようなものを指すのかを考えていきましょう。
1-1.ゴミ置き場以外の場所に放置すること
ゴミ置き場以外の場所に長期間ゴミを放置すると、不法投棄とみなされます。公園・道路・山林・河川敷などです。ゴミの量に関係なく、ゴミを置き去りにした場合は不法投棄にあたるので注意してください。
1-2.リサイクルせず置き去りにする行為
リサイクルせずに置き去りにする行為も、不法投棄に該当します。家電リサイクル法の対象品目であるテレビ・冷蔵庫・洗濯機・エアコンなどは、自治体回収ができません。リサイクルが推奨されているパソコンも同様です。正しい手順を踏まず、ゴミ置き場などに放置すると、所有者が罪に問われるので注意してください。
1-3.乗り捨てられたバイクなども不法投棄となる
長期間空(あ)き地や道路に置き去りにされ、乗り捨てられたバイクなども、不法投棄となります。ナンバープレートが外されていても、車体番号から所有者を探し出すことは可能です。不法投棄として罰則を受けることになります。
1-4.個人と法人、どちらも罪に問われる
ゴミを置き去りにしたのが、個人・法人のどちらでも、不法投棄の罪に問われます。ただし、悪質な回収業者に依頼し、回収されたものが不法投棄となった場合は、依頼者である個人が罰則の対象となるケースがあるので注意してください。
2.不法投棄の具体例
実際にあった不法投棄について、具体例を挙げてご紹介します。
2-1.香川県で起きた産業廃棄物不法投棄
香川県では、1970年ごろに産業廃棄物が豊島に不法投棄される事件が起きました。汚泥・プラスチック・廃油などおよそ91万トンもの廃棄物が置き去りにされ、近隣住民のアレルギー発症・環境汚染などが起こり、深刻な被害をもたらしたのです。ゴミを排出した法人は、懲役10か月・執行猶予5年・罰金50万円の刑を受けています。また、法人が倒産したため、廃棄物を除去に、281億円を自治体が負担しました。
2-2.青森と岩手県境で起きた産業廃棄物不法投棄
青森と岩手の県境では、1999年ごろに産業廃棄物の不法投棄が起こりました。汚泥や燃え殻などが置き去りにされ、範囲は27ヘクタールに及んだのです。産業廃棄物のほとんどは、首都圏から持ち込まれてもので、捜査により責任追及対象が2万2000社にも上りました。実際に不法投棄を行った業者は、2000万円の罰金を受けています。撤去した産業廃棄物の量はおよそ115万トンも及び、今もなお原状回復の途中です。また、原状回復にかかる費用は、480億円と予想されています。
2-3.山梨県で起きた産業廃棄物不法投棄
山梨県大月市では、2006年に解体工事業者による不法投棄が起こりました。解体後の資材などを適切に処理せず、自宅や農地に置き去りにしたのです。解体工事業者の代表者には、懲役2年・執行猶予3年・罰金100万円が言い渡されています。また、法人に対し、罰金300万円の判決となりました。
2-4.食品メーカー社員による不法投棄
2012年には、食品メーカーに勤務する複数の社員が、廃棄製品を排水溝へ不法投棄する事件が起こりました。通行人が発見して通報したことで、不法投棄事件として立件されたのです。社員らは逮捕された後、書類送検となりました。個人名が表に出るだけでなく、企業イメージが大きく損なわれる事件です。
2-5.引っ越し業者による不法投棄
2012年に引っ越し業者による不法投棄がありました。依頼者から家財の廃棄を請け負ったにもかかわらず、回収後に路上へ放置してしまったのです。不法投棄を行った社員だけでなく、引っ越し業者も責任を問われ、書類送検となりました。
3.不法投棄を発見したらどうすべきか?
不法投棄を発見したら、どのように対処すべきなのでしょうか? 通報する際の手順をご紹介します。
3-1.不法投棄を目撃しても直接対話しない
不法投棄を目撃しても、直接対話しないでください。反撃され、被害に遭う危険性があります。不法投棄がなされている場所を管理する機関へ連絡してください。
- 国道:国土交通省
- 河川敷・県道:県の土木事務所
- 市道:市の土木管轄室土木管理課
- 水路:市の土木局水路治水課
- 公園:市の土木局公園緑地課
上記は、管轄の一例です。また、事件性がある場合は、警察に通報してください。
3-2. 期間・量・場所・置き去りされているものを伝える
通報する際は、不法投棄されている期間・廃棄物の量や内容・場所を聞かれます。分かる範囲で伝えましょう。また、通報者の氏名や連絡先も必要です。名前などを伝えても、不法投棄の通報者として名前が公表されることはないので安心してください。
3-3.マンションなど敷地内の場合は管理組合に相談する
マンションなど敷地内で不法投棄が起きている場合は、管理組合や管理責任者に相談してください。管理責任者は、不法投棄を防ぐよう管理をする必要があります。また、不法投棄が起きた場合、良好な環境を提供するため、廃棄物の処分をしなければなりません。
3-4.不法投棄を発見しても動かさない
不法投棄を発見したら、動かさないでください。汚染された物質である可能性もあるため、触れる行為も危険です。まず、管理している期間へ速やかに通報や相談をしてください。廃棄物を動かし、触れることで、犯人を特定できなくなるケースもあるので注意しましょう。
4.不法投棄でよくある質問
不法投棄に関する質問を集めました。
Q.不法投棄に関する法律とは?
A.2つあります。「産業廃棄物の処理および清掃に関する法律」と「ポリ塩化ビフェニル(PCB)廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」です。不法投棄が発覚した場合、法律に基づいた処分が下されます。
Q.不法投棄を見過ごしているとどうなるのか?
A.ゴミがある場所には、新たなゴミが増えるものです。環境がどんどん悪化していき、治安が乱れていくでしょう。犯罪の温床となるため、早期に対処することが大切です。放火などが起こる場合もあります。
Q.私有地に捨てられたものは、自治体で対処できるのか?
A.自治体では対処できません。土地の所有者がきちんと管理し、対処することが求められます。また、不法投棄の再発防止に努めることも大切です。
Q.不法投棄の犯人を見た場合、何を覚えておくといいのか?
A.早期に犯人を逮捕するため、人物の特徴・人数・車のナンバーや車種を覚えておきましょう。大まかな情報でも、犯人の手がかりとなります。気づかれないよう、写真や動画で記録する方法もおすすめです。
Q.不法投棄が未遂の場合、罰則の対象にならないのか?
A.未遂の場合でも罰則の対象になります。不法投棄の罰則は厳しいため、ルールとモラルを守ることが大切です。個人の場合、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金で、両方の罰を受けるケースも珍しくありません。法人の場合は、3億円以下の罰金です。不法投棄をせず、廃棄物は正しく処分しましょう。
まとめ
不法投棄は犯罪です。個人・法人を問わず、罰則も厳しくなっています。リサイクルが推奨されているものをゴミ置き場に放置した場合も、不法投棄とみなされてしまうケースがあるので注意してください。産業廃棄物による環境汚染や治安の悪化も懸念されています。ゴミは安易に捨てず、手順とマナーを守って処分しましょう。