寒い季節に大活躍する薪(マキ)ストーブですが、長く快適に使い続けるためには定期的な煙突掃除が必要です。しかし、「掃除方法が分からない」「薪ストーブの掃除が大変そうで購入を躊躇(ちゅうちょ)している」など、薪ストーブの掃除で悩んでいる方が多いでしょう。薪ストーブの利用者はまだ少ないのですが、きちんとポイントを押さえておけば快適に使うことができます。
本記事では、薪ストーブの掃除方法とポイントについて解説しましょう。
- 薪ストーブの煙突掃除が必要な理由は?
- 薪ストーブの煙突掃除を自分でする方法
- 薪ストーブの煙突掃除を業者へ依頼する方法
- 薪ストーブの煙突掃除に関してよくある質問
この記事を読むことで、薪ストーブの煙突掃除の方法とポイントが分かります。悩んでいる方や購入を検討している方は要チェックです。
1.薪ストーブの煙突掃除が必要な理由は?
なぜ、薪ストーブの煙突掃除が必要なのでしょうか。汚れの種類や付着しやすい箇所についても説明します。
1-1.薪ストーブに付着しやすい汚れは?
薪を燃やすと、木タールやススなどが必ず煙突に付着します。これは絶対に避けられない汚れなので、定期的に掃除する必要があるのです。煙突内部は直接確認するのが困難なので、汚れ具合が分かりません。しかし、内部はススなどで黒くなり、灰もこびりついています。室内にあるカバープレートの表面にも、ススや灰などの汚れがついているので掃除が必要です。
1-2.どこに汚れがつきやすいのか?
煙突の内部・天板・側部スリットなど、さまざまな場所に汚れが付着しやすい傾向があります。特に、煙突の天板部は、上にのぼる煙が直接当たる場所なので汚れがひどいでしょう。煙突をのぼってきた煙が冷やされるため、どうしてもススがつきやすくなるのです。また、煙突が曲がっている場合、曲がりのある箇所にススが溜(た)まりやすくなります。薪ストーブの購入を検討している方は、煙突がまっすぐになっているシンプルな構造を選びましょう。そのほうがメンテナンスが楽になり、交換コストも抑えることができます。
1-3.掃除を怠るとどうなるのか?
煙突内にススや木タールがついている状態だと、煙突内の断面積が減少します。その結果、良好なドラフト(煙突内の上昇気流)が得られなくなるのです。また、煙突内に蓄積されたススは、ストーブから上がってくる熱い空気から火がつき、火災が起きる原因となります。3mm程度のススがついただけで火災が起きる可能性が高くなるといわれているため、定期的な掃除が必要です。
1-4.掃除のタイミング・頻度は?
最低でも、年に1回の煙突掃除が必要だといわれています。掃除だけでなく、本体の点検も必要でしょう。理想的なのは、シーズン前の掃除と点検、そしてシーズン後の掃除です。年に2回掃除を行えば、薪ストーブも長く快適に使うことができるでしょう。シーズン前にきちんと掃除・点検を行うことで安心して使うことができ、シーズン後の掃除を心がければ頑固な汚れ防止につながります。
2.薪ストーブの煙突掃除を自分でする方法
薪ストーブの煙突掃除は、自分で行うことができるのでしょうか。具体的な掃除方法とポイントを解説します。まずは、自分で掃除する前に、煙突の構造と仕組みをチェックしておきましょう。
2-1.まずは煙突の構造・仕組みを知ろう!
薪ストーブは、鋼板製または鋳鉄(ちゅうてつ)製の密封された箱型本体の中で、薪を燃やして室内を暖める暖房機器です。同じ意味で捉えられていることが多い暖炉は、燃焼室が囲われていないので燃焼用空気の微調整ができません。一方、薪ストーブは必要な空気量を制限し、過燃焼を防ぐように設計されています。そのため、薪が長持ちし燃費が良いというメリットがあるのです。また、薪ストーブの排気は煙突からだけとなっています。つまり、効率よく排気させるためには、煙突のプランニングとメンテナンスが重要ということです。
2-2.簡単な掃除なら自分でできる
煙突内を簡単に掃除するのは、リスクが高いですが、自分でもできます。大切なのは、無理のない範囲で作業をすることです。定期的に掃除とメンテナンスを行っているなら、軽い汚れだけなので自分で掃除することもできるでしょう。しかし、長年放置し頑固な汚れがついている場合は、自分で取りのぞくのが困難なので業者へ依頼することをおすすめします。
2-3.薪ストーブの煙突掃除に必要なものを紹介
自分で掃除する場合、以下のアイテムを用意してください。
- マスク
- すべり止めがついている軍手
- 汚れても大丈夫な服装
- 脚立
- ぞうきん2~3枚
- ススを受ける袋(ゴミ袋またはビニール袋)
- 煙突掃除用のブラシ
- ワイヤーブラシ(小)
ホームセンター等で販売している煙突掃除用のブラシを購入する際は、自分の煙突の内径に合うものを選ぶのがポイントです。必ず、煙突の内径を測ってから購入しましょう。また、耐熱塗装スプレーも役立ちますので用意します。これは、経年劣化や剥がれたりした際のタッチアップ用に使えるものです。煙突掃除のついでにメンテナンスをしてください。
2-4.掃除の手順とポイント
必要な道具が準備できたら、以下の手順どおりに煙突掃除を進めていきましょう。
- 窓を開けて室内の通気をよくする
- 室内のストーブ部分のところで、煙突の一部を取りはずす
- 煙突の下端に掃除したススが落ちて入る袋を設置する
- 屋根にのぼり、煙突トップを取りはずす
- 屋根の上からロッド付きのブラシで煙突を掃除する
- 取りはずした煙突の一部とトップを掃除する
- トップをもとの位置に戻し、ススが入った袋を取りはずす
- 取りはずした煙突部分を取りつけ、灰を取りのぞいたら完了
ポイントは、窓を開けてしっかり換気することと、煙突をブラシで掃除する方法です。ブラシをガシガシ動かしながら煙突内の汚れをキレイにしますが、ロッドは一方の方向だけに回転させるのがコツとなります。誤ってブラシのジョイントになっているネジがはずれる方向にまわすと、煙突の途中でブラシがロッドからはずれてしまうので注意してくださいね。
2-5.灰を処理する方法は?
煙突掃除で出た灰は、完全に冷めるまで可燃性のあるものと触れないようにすることが大切なポイントです。火が消えていても熱が残っているため、着火する恐れがあります。実際に、大量の灰を外にまいたときに庭の枯れ葉に燃え移ったというトラブルも起きているのです。燃えにくい容器などに灰を2日間置き、完全に冷ましてから可燃ゴミとして出してください。ストーブ内に溜(た)まっていた灰は、専用の不燃性バケツ(フタ付き)に入れておきましょう。
2-6.よくある失敗例
屋根の上から掃除するのか、煙突の下側から掃除するのかを考えずに、煙突掃除用のブラシを間違って購入するケースです。どちらの方法で掃除するのか明確にしておかなければ、適切なブラシが購入できません。屋根の上から掃除する場合は、煙突の曲がりにも対応できるやわらかいタイプがおすすめです。煙突の下側から掃除する場合は、やわらかいロッドよりも固めのロッドがいいでしょう。持ち手部分がしっかりしていなければ、煙突の途中で使えなくなるので注意が必要です。
2-7.無理をして屋根にのぼるのはNG
勾配が急な屋根にのぼって煙突掃除をするのは非常に危険です。足場が不安定なので、誤って転び落ちる恐れがあります。屋根からの転落は命に関わるため、プロの清掃業者へ依頼したほうがいいでしょう。自分で煙突掃除をする際は、無理のない範囲で行うことが大切です。
3.薪ストーブの煙突掃除を業者へ依頼する方法
ここでは、薪ストーブの煙突掃除を業者へ依頼する方法とポイントを解説します。
3-1.プロに依頼したほうがいいケース
自分での掃除が困難な場合や、頑固な汚れが付着している場合は、プロに依頼したほうがいいでしょう。また、徹底的にキレイにしたい方も自分でするより業者に依頼したほうが、丁寧かつスピーディーに掃除できます。費用はかかりますが、手間と時間が省けるので一石二鳥といえるでしょう。自分でするか、プロに依頼すべきかもう1度じっくり考えてみてください。
3-2.業者による掃除の流れ
薪ストーブの清掃に慣れている業者なら、素早くかつ適切な方法でキレイにしてくれます。基本的に、取りはずしができる部分はすべて取りはずし、専用の機器などを使用し掃除することになるでしょう。業者によって、薪ストーブの形状・煙突内径の大きさなどで掃除方法が異なるため、依頼前に具体的な方法と流れを確認してください。疑問点や不安要素があるなら、契約前に尋ねておきましょう。
3-3.費用は約2万円~
気になる薪ストーブの煙突掃除にかかる費用は、約2万円~です。どこからどこまで掃除を行うか、どのような方法で掃除するかなどで費用は異なりますが、5万円以内で済むケースがほとんどでしょう。ただし、煙突掃除に加えてメンテナンスを依頼する場合、5万円以上になる可能性があります。
3-4.業者選びのポイント
煙突掃除の業者選びで押さえておきたいポイントは以下のとおりです。
- 薪ストーブの煙突掃除に長(た)けているか
- 無料見積もり・無料相談を受けつけているか
- どのような質問にも丁寧に受け答えしてくれるか
- ホームページ等に実績や掃除事例が記載されているか
- 明確な料金設定が記載されているか
- 見積書の内容が細部まで記載されているか
4.薪ストーブの掃除に関してよくある質問
薪ストーブの掃除に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。
Q.室内から煙突掃除をする場合の注意点は?
A.室内が煙突から落ちてくるススや灰などで汚れる可能性があります。そのため、まず養生をしっかりと行うことが大切です。室内煙突をはずした後、大きなビニール袋で煙突を包みましょう。そして、ビニール袋に掃除棒がギリギリ通る穴を開け、掃除棒を延ばし、ブラシを使って下から上へ煙道のススを払います。屋根に登る必要がなく安全な方法ではありますが、煙突掃除で1番重要な煙突トップのメンテナンスができません。その場合は、煙突トップだけ業者へ依頼するのも1つの手段です。
Q.薪ストーブのドアガラスの掃除方法は?
A.ストーブの煙突掃除とあわせて、室内にある煙突のドアガラスも掃除しましょう。ガラスに直接、ガラスクリーナーを吹きかけ、キレイなぞうきんで汚れを拭き取るだけでOKです。ガラスクリーナーは頑固な汚れにも効果が期待できます。定期的に磨くことで、耐熱ガラスの透明感を保ち、美しい炎が堪能できるでしょう。
Q.自分でできる本体のメンテナンス法は?
A.部品の変形・破損の早期発見につながるメンテナンスは、定期的に行うことで効果が発揮します。特に、バッフルまわりとダンパー付近の変形は、薪ストーブの寿命にもつながるので要チェックです。扉まわりのパッキン(ガスケット)も変形していないかどうか必ず確認してください。事前に、ストーブ本体の構造を把握しておけば、部品の変形・破損があっても早期発見ができるはずです。
Q.捨てるだけの灰に活用法はあるのか?
A.薪が焼けた後にできた灰は、さまざまな活用法があります。たとえば、畑の肥料として使うことです。純粋な木材だけを燃やした灰には、ミネラル成分が含まれているため、植物の生育に適しています。ただし、化学肥料や配合肥料と一緒にまかないように気をつけてくださいね。ほかにも、山菜のアク抜き・台所用洗剤として使う方法があります。
Q.受け皿に溜まった灰は全部かき出すべきか?
A.全部キレイに掃除する必要はありません。火室内に常時2~3cmほど残しておくことで、炉の底冷えを抑えて火付きが悪くなることを避けることができます。さらに、置き火が持続しやすくなり、高温による炊き過ぎで炉が傷むのを防いだりすることもできるのです。さまざまなメリットがあるため、灰は2~3cm程度残しておくといいでしょう。
まとめ
薪ストーブは普通の暖炉とは異なる構造・仕組みをしています。唯一の排気が煙突だけなので、煙突内は定期的な掃除・メンテナンスが必要なのです。簡単な方法なら自分でも掃除できますが、煙突トップなど徹底的に掃除したい場合は業者への依頼をおすすめします。勾配のある屋根に無理して登ると、転落事故につながるので注意してくださいね。最低でも、年に1回の掃除・メンテナンスをし、安全かつ快適な薪ストーブを楽しみましょう。